動画に強い高倍率ズームコンパクト「PowerShot SX280 HS」が登場した。「動画コンパクト」というフレーズで動画機能を強調しているが、動画撮影のみならず、さまざまなシーンで快適に使える便利なカメラだ。
[小山安博,ITmedia]
強力な手ブレ補正やDIGIC 6で進化した高倍率ズーム機
キヤノン「PowerShot SX280 HS」は画像処理を行う映像エンジンに、新開発の「DIGIC 6」を搭載し、特に動画撮影に関する能力を大きく向上させている。DIGIC 6は動画撮影以外にもAF速度や画質など、多岐にわたる恩恵をもたらしているが、まずは基本的なスペックを確認しておこう。手ブレに対しても強化が行われている。SX260 HSでも水平回転/縦回転/上下/左右の4軸へ光学式の手ブレ補正を行っていたが、新製品ではさきほどの4軸(光学式で補正する水平回転/縦回転/上下/ 左右軸)補正に加えて、水平移動/水平回転ゆがみ/縦回転ゆがみの3つを電子式補正する5軸手ブレ補正となっている。
画質面については、DiGiC 6によってノイズ除去性能が強化され、ディテールの再現性も向上したほか、ダイナミックレンジも拡大したとされている。実際、センサーの画素数も有効約 1210万画素と抑えめのためか、同サイズセンサー搭載機の中では良好といえる。ただ、裏面照射型センサーらしいざわつく感じのノイズは残っているように 感じられ、ノイズ除去よりもディテールを残す方を優先しているのかもしれない。ただ、その分ISO感度を上げても極端にノイズが増えず、シーン次第では ISO1600ぐらいまでは活用できそうだ。
「動画コンパクト」
SX280 HSは「動画コンパクト」とアピールしており、1920×1080/60pへの対応など、動画性能が向上している。加えて動画撮影時のノイズ低減も強化さ れ、ISO1600でDIGIC 5のISO400相当のノイズ量になるという。ただ、これが効果を発揮するのは30pでの撮影の時のみとなる。映像コーデックがMPEG4-AVC/H.264であるのは既存同社製品と変わらないが、ファイルフォーマットにはMOVではなくMP4を採用す る。AVCHDに比べると、PCでの処理がやりやすく、スマホやタブレット端末で利用しやすいのは大きなポイントだ。1回の撮影ではファイルサイズが4G バイトになるまで、またはフルHD/HD画質で29分59秒まで連続撮影できる。この辺りの制限は「ビデオカメラ」ではないので、仕方がないだろう。
動画撮影時には5軸ブレ補正に加えて、水平移動/水平回転のゆがみ/縦回転ゆがみについても電子補正が行われるために補正強化は強力だ。ダイナ ミックISの「1」に設定しておくと、歩きながらの撮影でも手ブレが抑えられる。効果はてきめんで、かなり快適に撮影できる。下の3本の動画は上から手ブ レ補正OFF、手ブレ補正ON(ダイナミックIS「2」)、手ブレ補正ON(ダイナミックIS「1」)となるが、手ブレが明らかに低減されていることが分 かる。
PowerShot SX280 HS 手ブレ補正OFF
PowerShot SX280 HS 手ブレ補正ON ダイナミックIS「2」
PowerShot SX280 HS 手ブレ補正ON ダイナミックIS「1」
撮影機能としては「プラスムービーオート」が面白い。静止画撮影をする度に、その直前の4秒間をHD動画として保存し、最終的に1つのファイルと して保存する、という機能。再生してみると、1日の動きをダイジェスト動画として確認できるので、撮影時の雰囲気が伝わって面白い。
無線LANとGPSで画像を活用
無線LANも内蔵しており、撮影した写真や動画をスマートフォンなどへ転送できる。使い方はまず再生画面にして、十字キーの上ボタンを押す。すると無線LANの設定画面になり、大きめのアイコンが並ぶ。アイコンは「カメラ」「ス マートフォン」「PC」「プリンタ」「インターネット」の5種類を示しており、無線LANを使ってこれらに画像を転送できるようになる。やはり一番使いた いのはスマートフォンとの連携機能だろう。
スマートフォンへの転送はiOS/Androidに対応した「Canon CameraWindow」が必要なので、事前に入手しておく。SX280 HSを再生画面から無線LAN設定画面としたら、スマートフォンアイコンを選択、すると「接続先の機器の選択」画面になるので、初回利用時はまずスマート フォンを登録する。すると無線LANが起動してカメラがアクセスポイントとなり、画面にはSSIDと暗号化キーが表示される。
次はスマートフォンの操作だ。スマートフォンの無線LAN設定を呼び出して、画面に表示されたSSIDと暗号化キー(パスワード)を使って接続する。接続されたら、
接続されると、カメラ内の画像をスマートフォンから閲覧し、そこから好きな画像を転送できる。フルサイズの画像や動画を転送することもできるし、 画像を2Mサイズなどの小さいサイズにリサイズしてから転送することも可能。そのままSNSやブログに投稿するだけなら、リサイズしてしまった方が、カメ ラからスマートフォンへの転送も、スマートフォンからSNSなどへの投稿にも時間がかからず便利だ。
カメラで画像を表示した状態で無線LANを起動してスマートフォンと接続すると、その画像をそのまま送信できる(写真=左)、「選んで送信」にすると、複数画像を同時に送信できる。リサイズする設定にしておくと、転送時間が短縮できる(写真=右)
SX280 HSはGPSも内蔵しており、撮影時に画像に位置情報を記録することができ、PCやスマートフォンに転送した際に、地図上に画像を表示することができ、「どこで撮影したか」という思い出を振り返ることができる。特に旅行先で便利だろう。
位置情報の取得をカメラ本体で行えるのは便利だが、屋内などGPSを利用できない場所もある。そこで利用したいのが、先ほどのアプリ「Canon CameraWindow」だ。このアプリにはスマートフォンの位置情報機能を使ってGPSログを記録しておく機能も備えており、転送した写真へタイムス タンプを元にした、位置情報を追記することができる。
スマートフォンは位置情報の取得についてGPSだけではなく、携帯電話の基地局、可能であれば無線LANという、3種類の方法を用いるため、カメ ラのGPSが位置を検出できない場合でも、位置を取得できる可能性が高い。ただ、この方法では常時GPSを起動する状態となるためにスマートフォンのバッ テリを消費する。カメラ側のGPSと併用しながらの利用が現実的だろう。
写真も動画も、スキのない常用カメラ
PowerShot SX280 HSは、広角から超望遠まで使える高倍率ズーム機ながら、ポケットにも入るコンパクトサイズを実現。さまざまなシーンで活躍するカメラだ。オートでカメラ 頼りの撮影だけでなく、P/Tv/Av/Mのマニュアル撮影も可能で、幅広く活躍できる。最近の流行である無線LAN経由でのスマートフォンとの連携機能 もサポート。「スマートフォンのカメラを拡張するカメラ」としても活躍できる。高倍率ズーム機ならば他社製品も含めて数多く存在するが、やはり、ボディのコンパクトさを保ったままで動画性能を大幅に強化したのが大きなポイン トといえよう。特に手ブレ補正は強力で、ムービーカメラとしても十分であるほか、MP4記録なので記録後の活用が容易なのも見逃せない。
電源オンからズーミング、AF、そして撮影までの一連の動作が機敏なのもうれしいところ。しかも本体サイズは106.4(幅)×62.8(高 さ)×32.6(奥行き)ミリ、約233グラム(バッテリー「NB-6L」、SDメモリカード含む)と、ポケットに入れて常に持ち歩ける。普段のスナップ 撮影から旅のお供まで、いつでも使えるスキのない常用カメラといえよう。
光学20倍ズームで一気に被写体に寄れる。デジタルズーム「プログレッシブファインズーム」を併用すればさらに被写体へ接近できるが画質は低下する
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