光学ズームの高倍率化は凄まじい勢いで進んでおり、一眼レフっぽいデザインのいわゆるブリッジタイプの「DSC-HX300」では光学50倍 24~1200ミリ相当にまで到達している。手ブレ補正も強化されており、1200ミリの世界を手軽に楽しめる。
“スマホにないメリットを伸ばそう”と、コンパクトデジカメ(レンズ一体型デジカメ)のズーム倍率アップが進んでいる。一般的な売れ筋製品ですら20倍前後は当たり前になり(最新「20倍ズームコンデジ」は手持ちでもブレずに撮れるか? 5モデル検証)、一眼レフっぽいデザインのいわゆるブリッジタイプでは、50倍のズーム倍率を実現するモデルも登場している。
今回取り上げるソニーのサイバーショット「DSC-HX300」もそんな超高倍率ブリッジカメラに属する製品で、レンズは35ミリ換算 24~1200ミリ相当 光学50倍のカールツァイス 「バリオ・ゾナーT*」を搭載する。前モデル「DSC-HX200V」は27~810ミリ相当の30倍ズームだったので、大幅な倍率アップだ。
コロンとした丸みを帯びた外観はHX200Vをほぼ踏襲したデザインといえるが、上面のボタン形状が一部変更されていたり、再生ボタンの位置が変 更されていたりと細かな変更が加えられている。背面のチルト式液晶(3型/92万画素)も継続しての搭載となる。なお、HX200Vとは異なりGPSは搭 載しない。
サイズは129.6(幅)×93.2(高さ)×103.2(幅)ミリ、約650グラム(バッテリー、メモリースティックデュオ含む)なので、レン ズの飛び出しを除けば、レンズを装着しない状態のエントリークラスのデジタル一眼レフに近い(キヤノン「EOS Kiss X6i」のボディのみのサイズが133.1×99.8×78.8ミリ/約575グラム)。HX300はグリップも深めの形状となっており、実際に手にして も、その感覚は軽い一眼レフを持ったときのそれに類似している。
で、やはり気になるのは「1200ミリ相当が常用できる」かどうかだろう。まずは手持ちで撮影したワイド端/テレ端の例を。
1200ミリ相当まであると、肉眼では確認できていなかった遠方のものを写真に収めることができる。まるで望遠鏡を使ってるような感覚だ。
ズーム操作はシャッターボタンと一体化しているズームレバーで行うほか、鏡胴リングからも操作できる(スライドスイッチでピント/ズームの機能を 切り替えられる)。ズームレバーの操作も便利なのだが、微妙な倍率調整はやはり鏡胴リングから行う方が楽に感じる。併用も可能なので、大まかな倍率変更は ズームレバーで、微細な調整をリングで行うのがいい。
HX300では手ブレ補正機構として、レンズ群のうち前方の大きなレンズ群を含む2群を動作させる「2群防振手ブレ補正」を搭載しており、 HX200V比では約2.7倍のエリアを補正する。ただ、既存モデルよりも効果が上がっているとはいえテレ端では1200ミリ相当。超高倍率域ではきちん と両手でカメラを構えて、脇を締めていないと手ブレ写真を招くことになる。
この手ブレ補正は常時有効となっているので、カメラを構えてファインダー/背面液晶をのぞき込んでいる際も像がグラグラせず、ストレスなく撮影で きるのは評価したいポイントだ。ファインダーは20万画素相当の電子式で、アイセンサーは搭載しておらず、背面液晶/ファインダーの切り替えは手動とな る。そのためにファインダーで撮影したあとの確認を背面液晶で行うにはボタン操作が必要となり、ちょっと面倒に感じる。
天候や場所といった撮影条件にも左右されるが、「通常撮影で最速約0.15秒、光学50倍ズーム時でも約0.22秒」をうたうAFは実際の利用に おいても十分に高速。ただし、ISO感度がオートの状態ではあまり積極的に上げない傾向があるようで、夕方や夜間など光量が十分ではない状態で動くものを 撮ろうとするとシャッタースピードが遅くて被写体ブレを起こすということもあった。被写体や状況に応じて、撮影モードの変更やISO感度のアップなど、細 かな撮影設定の変更を行う方が良さそうである。
1200ミリ相当というだけでも強烈だが、超解像技術を用いたデジタルズームも用意されている。利用することで画質の低下は認められるが、100 倍相当(2400ミリ相当)までのズームも行える。ただ、その際にはさらに手ブレおよび被写体ブレに注意する必要が増すので、三脚の利用は欠かせない。そ れに対象が野鳥など動くものであればフレームに入れ続けることも困難となる。使いどころは限られそうな感じである。
撮影モードダイヤルには、P/A/S/Mの一般的な露出モードに加えて、サイバーショットではおなじみのおまかせオート/プレミアムおまかせオー ト、シーンモード、パノラマなどが用意されている。なお、レンズの開放F値はF2.8-F6.3で、絞り羽根は7枚絞り羽根の虹彩絞りとなる。絞り優先 オートで絞り値を変えながらの撮影という、一眼レフ的な使い方にも対応できるが、F8より絞ることはできない。
搭載する撮像素子は1/2.3型 有効2040万画素の裏面照射型CMOSセンサー“Exmor R”で、画像処理エンジンには“BIONZ”を組み合わせる。ISO感度は最高ISO12800だが、ISO4000以上は重ね合わせ処理による値となる。
撮影機能としては、フル画素(20M)での秒間10コマ連写が目を引く。メカシャッターを使っての連写なので高速移動する被写体を撮影してもゆが み(ローリングゆがみ)が生じることなく、正確な形で記録できる。ただ、記録可能枚数は10枚まで(つまり1秒分しか記録できない)で、USH-I対応 カード(サンディスクのExtreme Pro 45MB/s)を使っていても撮影後にカードへの記録が終了するまでに数秒の時間がかかった。
そのほか、ライブビュー撮影で画面を確認しながら明るさ(露出)/色合い(ホワイトバランス)/鮮やかさ(彩度)を調整できる「マイフォトスタイ ル」や、いわゆるデジタルフィルターの「ピクチャーエフェクト」、360度対応のパノラマ撮影機能など、サイバーショットシリーズで搭載している機能は一 通り備えている。
動画撮影は1080/60pに対応し、手ブレ補正もデジタルビデオカメラ「ハンディカム」での技術を元にした光学/電子式の併用補正「アクティ ブ」モードが機能するため、回転方向の補正も行われる。動画撮影しながらの静止画撮影も可能だ。記録形式はAVCHDおよびMP4だが、最高画質となる 1080/60pはAVCHDのみとなる。
1080/60pのフルHD動画。ズーム倍率を上げていくと手ブレがシビ
アになる様子が分かる
アになる様子が分かる
ただ、交換レンズで1200ミリ相当を実現しようとすれば、非常に高価なレンズが必要となりそれでも焦点距離が足らずにテレコンバーターを介してといったようにハードルが高くなることを考えると、1台で1200ミリ相当までカバーできるのは大きな魅力だ。
1200ミリ相当までズームして木の先端の花びらを F6.3 1/320秒 ISO80 露出補正+0.7
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