アメリカの、特に西海岸では、日本車に遭遇する確率はかなり高く、その中でもチューニングやカスタマイズをしているクルマをそれなりに目にする。日本車を購入して手を入れるというニーズがあることは、メーカーも周知している。SEMA SHOWにトヨタ(レクサス)、ホンダ、スバル、マツダといった国産メーカーが出展しているのはこうした背景があるからだ。
モーターショーであれば新型モデルや新技術の公開が中心になるが、アフターパーツやカスタマイズがメインとなるSEMA SHOWだけに、各社ともベース車両に手を加えた個性的なチューンドモデルを公開している。それでは各メーカーごとに紹介していこう。
プレスカンファレンス前のベールが掛けられた状態 |
■本田技研工業
ホンダがSEMA SHOWで公開したのは、3台のCR-Z。そのうち、ロールケージの入ったレースバージョンのみアンベールされていたが、そのほかの2台にはベールが掛けられていた。
2台のCR-Zはプレスカンファレンス中に公開された。シルバーにカラーリングされているのが無限が手がけたCR-Z。これは、先行して発売されている日本国内のパーツと同一のものが装備される。
レッドとブラックのツートーンに塗られたモデルは、「CR-Z Hybrid R Concept」と名づけられている。パフォーマンスはHPD(ホンダ・パフォーマンス・デベロップメント)が、スタイリングはホンダR&Dが担当したと記されていた。つまり、米国ホンダが手がけたカスタマイズコンセプトモデルということになる。
エクステリアは、大きな開口部が特徴となるフロントバンパーと、前方に延長されたディフューザーを装備する。リアまわりでは、GTウイング、ディフューザーを装着。ルックスはかなりスポーティな印象を受ける。
スタイリングもさることながら、注目したいのは“ターボ化”されたエンジン。スペックは、隣に並べられたレースバージョンと同じで、ボルグワーナー製のボールベアリングターボを装着し、1.5リッターエンジンのままでモーターとエンジンを合わせたトータル出力は約200HP/約24.1175lbs.-ft.(約202PS/約24.0kgm)までパワーアップしている。
また、ターボ化とともに注目したいのが、ハイブリッド用バッテリーが変更されていること。NCM(ニッケル・コバルト・マグネシウム)を採用し、エネルギーをより効果的に蓄え、モーターに伝えることが可能だと言う。バッテリー電圧が173Vまで昇圧していることもあり、IMA(インテグレーテッド・モーター・アシスト)の出力も25HP/8.9kgmまで引き上げられている。
このターボエンジンは、当面はレース用として使われるそうで、市販の可能性はアナウンスされていない。
無限パーツを装着するCR-Z | ||
CR-Z Hybrid R Concept |
室内はロールケージに覆われ、リアにはIMAを駆動させるバッテリーが置かれる | ||
センターコンソールやフロアシートなども取り外されている | エンジン本体は1.5リッターのままで手が入っていない | アクチュエーターの奥にわずかに見えるのがターボチャージャー。それほど大きくないボールベアリングタイプを採用する |
■レクサス(トヨタ自動車)
屋内のトヨタブースとは別に、中庭にブースを構えるレクサス。注目の一台は、CT200hのF SPORTモデル。CT200hは、来年初頭に国内で発売が開始されるレクサスブランド初のハッチバックモデルだが、早速カスタマイズのアイテムが発表された。
エクステリアは、リアゲートに「F SPORT」のバッチが貼られているだけだが、車高は専用のサスペンションでローフォルム化。ホイールも18インチを履く。スポークの隙間から覗くブレーキも専用パーツで、328φのドリルドローターに4ピストンキャリパーがセットされる。
CT200h F SPORT | ホイールは18インチで、タイヤはピレリPゼロ ネロを履く | |
F SPORTに装着されたパーツはこの3点 | 「GORDON TING」「0-60MAGAZINE」が製作した「GS450h」のレースバージョン。エクステリア/インテリアともに大幅に手が加えられている |
フロント、リアともに大型のディフューザーが取り付けられる | 助手席が付けられているが、内装の作りはレースカーそのもの | |
こちらもカスタムメーカーが手がけた「LS600h」のデモカー |
■トヨタ自動車
トヨタブースは、北米仕様のミニバン「シエナ」をストレッチしたリムジン仕様や、ヤリスのレースモデルを展示しているが、注目の1台は「プリウスplus」と呼ばれる足まわりパーツを装着したモデル。スプリング、スタビライザー、ホイールが専用パーツとなるplusは、ローフォルム化されスポーティさを強調した仕上がり。17インチホイールは鍛造で、スタビライザーを装着しているところから見てもハンドリングのチューニングを意識しているのがplusと言えるだろう。
プリウスplus。ノーマルよりも若干車高が落ちているのが分かる | ホイールは17インチ鍛造 | |
シエナのリムジン仕様。世界一リムジンが多いラスベガスによく似合う | ||
ヤリスGT-Sクラブレーサー仕様 |
■スバル(富士重工業)
インプレッサ一色に染まったスバルブース。注目を集めていたのは、モトクロスの人気選手でもあるトラビス・パストラーナが駆るインプレッサ。「Red Bull New Year.No Limits.」というイベントで、80m離れた2つの桟橋の間を空中ジャンプして越えるという記録を作った車両だ。
また、ニュルブルクリンクの北コースでトミ・マキネン選手のドライブにより、7分55秒という量産4ドア車でトップタイムを記録した車両も飾っていた。
それ以外には、レース車両の4ドアモデルも展示されており、こちらは「2011年Grand-Am コンチネンタルタイヤ・スポーツカーチャレンジ」用に開発された車両で、内装は全て取り外され、ボディー補強とともにロールケージが組まれる。エンジンは、排気量こそ2.5リッターでノーマルと変わらないが、鍛造ピストンを組んでいると言う。
レッドブルカラーに塗られたトラビス・パストラーナ号 | ||
ニュルで量産4ドアモデルでの最高タイムを叩き出したインプレッサ |
2011年のGrand-Am コンチネンタルタイヤ・スポーツカーチャレンジに参戦すべく製作された4ドアのレースカー | |
ブレーキはブレンボ製、サスペンションはコニ製を採用する | 純正メーターの前にAIM製のデータロガーが設置される |
オーディオブランドKICKERが製作した5ドアインプレッサ。リアシート部分にスピーカーを搭載する |
●マツダ
マツダブースは、レースカーとストリートチューニングカーの2つのコンセプトで展示を行っている。RX-8は、Grand Am GTと呼ばれるレースシリーズに参戦している車両で、2010年のチャンピオンを獲得している。マツダ3(アクセラ)は、RED LINE タイムアタック用に開発された車両で、フロントバンパー左右から生えているように見えるウイングやリアディフューザーなど、空力をかなり意識したボディーメイクとなっている。
一方のマツダ2(デミオ)やマツダ3のストリートバージョンは、レースカーほどの派手さはないが、車高を落としたローフォルムとボディーデカール、エアロパーツなどいかにもスポーツカスタムといった仕立てとなっている。
2010年のGRAND AM GTシリーズで、ドライバー、マニュアファクチャーの両タイトルを飾ったRX-8 | インテリアは全て外されたレース仕様 | |
レッドラインタイムアタックレースの改造無制限クラスにエントリーするマツダ3。外装はほぼカーボンパーツで、フロントにもウイングを装備する |
マツダ2のストリートバージョン | |
マツダ3のストリート仕様は、大径のホイールとエアロパーツが特徴 | |
MX-5(日本名:ロードスター)。ストリート仕様だが、室内にはロールケージが入っている |
(真鍋裕行)
2010年 11月 5日
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